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「あれも意外と好ましい時間だったのだけどねえ」
「あれ、ですか？」

ゆったりとした音楽が会話の邪魔にならない程度に掛けられた飴色の喫茶店。
古さというよりはほんの少し懐かしさを覚えるレトロな店内の片隅で、鷹通は目の前に座る男の言葉に首を傾げた。
近くの駅で待ち合わせて、それからこの喫茶店に入って小一時間程だろうか。
耳触りの良い音楽のあるこんな空間は居心地がいい、という話をしていたはずだ。
そこからつながる「あれ」とは何か。
首を傾げた鷹通に、その向かいに座る男──友雅は思い出すように目を伏せて口元を緩ませた。


どうぞ、と差し出されたイヤホンの片側。
初めて買ってもらった携帯音楽プレーヤーに目を輝かせて、自分の好きな曲を「この曲はあなたも好みじゃないかと思って」と感想を期待する顔を向けて。
並んで座ったソファで、肩を寄せ合って内緒話をするように息をひそめて片耳から流れ込む小さな音に集中した。
触れ合う体温と、見下ろす楽しげな笑顔と、片耳から流れ込む音楽と。

その三つは切り離せない記憶として友雅の中にしっかりと根を張っている。


「友雅さん？」
「ああ、すまないね鷹通」

訝しげな声に顔を上げ、コーヒーを一口含んで微笑む。

「あれ、とは何のことですか？」
「鷹通は覚えていないかな。昔君の家に遊びに行った時に、私に聴かせてくれただろう？　あれは確か．．．そう、バッハの無伴奏チェロ組曲第１番だったかな」
「それは．．．覚えています。むしろ、あなたが覚えていたことの方に驚いていますが」

鷹通の表情が懐かしさを含ませる。

「あの頃と言えば、買ったばかりのウォークマンが嬉しくて、良く聴いていましたから」
「随分お気に入りだったね。会うと私にも勧めてくれていたのだから」
「あれは．．．最初は確かに私から勧めましたが、次からはあなたが言ったんですよ」
「おや、そうだったかい？」
「そうです」

手にしたコップをテーブルに置いて鷹通が頷いた。

「君のおすすめをまた教えてくれたら嬉しい、と。だから私はレンタルショップで──」
「それは初耳だね。もしかしてわざわざ私の為に借りてきてくれていたのかい？」
「そっ、そういう訳ではないですが。何かのついでとか、そういうくらいで！」
「ふふっ、そうかい。有難う鷹通」

借りてきたというＣＤを、そのままＣＤコンポで聞いた記憶はない。
鷹通との音楽の思い出はいつも、二人で分け合ったイヤホンから流れ込む音だ。
それはあの時間を鷹通も気に入っていたという、何よりの証拠のようではないか。
くすくすと笑う友雅に、鷹通は微妙に視線を逸らしつつ目元を朱に染めている。その様がまた可愛らしい。

「ああ、でも．．．」

言葉を続けると、先が気になるのか鷹通が視線を戻す。
それににっこり笑って。

「今の君との関係と、こうして過ごす時間は、勿論何よりも格別のものだよ」
「．．．あ、有難う御座いますっ」

それは勿論私も嬉しくて、その、とごにょごにょ呟く真っ赤な顔を眺めながら、友雅はコーヒーを飲み干した。

「鷹通」
「はい！」
「今日は帰りにＣＤショップに寄ろうか」
「何か欲しいものがあるんですか」
「無伴奏チェロ組曲第１番。．．．鷹通も一緒に聴くだろう？」


向けられた悪戯っぽい笑みに目を瞬かせた後、鷹通もまた嬉しそうに破顔し頷いたのだった。


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やまもおちも意味もないよ！
現パロで、鷹通くんが幼いころから交流のある二人だったりするよ！
そのまま恋人同士になって付き合ってる二人だよ！
途中ちょっと疎遠になってた時期とかもあるかもしれないけどそこは妄想してね！！←

というわけで、シノさんお誕生日おめでとうございます。
無理矢理ひり出したネタなんで色々おかしかったり別人なのはもう見逃してくれても構わないのよ！←←
とりあえずいつもありがとうございます、そしてこれからもありがとうございますと先に伝えておいてみる。

新しい一年に、更に素敵なレディになれるよう祈ってますｗ