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同人サークル「天泣道化」なんてやってるかもしれない冴夜木ヤトによる、気の向くまま萌えの向くままの、とっても腐女子向けなブログ。 参加イベント情報とか発行物情報とかが載るかもしれない。
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Posted : 2025/04/21 11:32
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Posted : 2010/10/25 15:36
前からネタとして、書いとこう書いとこうと思いながら忘れてたところを、思い出したので書いてみる。
そんな平家景時な小ネタというか、閑話というか。
あるいは伏線?

まあ、そんな感じで。

以下色々捏造なので、シリーズ詳細は以前の記事(http://tenkyu.side- story.net/Entry/138/)にて確認してくださいませ。


時期的に言ったら「初陣」の連作の少し後で、「近づく始まりの終わり」の前くらい。
更に言うなら、まひろさん作の「覚悟」(ハルハナ某コミュ掲載)の後です。


*************


ぽかりと時間が空いた。

書き終えた書状を乾かす為に脇に寄せ、景時は珍しくだらしない姿勢で文机の上に右手で頬杖をついて遠くを見つめていた。
左腕の傷は大分良くなったものの、負荷をかけるとまだ痛みが走る為安静を言い渡されている。お陰で将臣の刀の稽古にもあまり付き合えないのだが、その代わりに重衡や知盛が将臣に稽古をつけてくれている事を聞き、少し安心もしていた。
基本が身についてしまえば、後は景時よりも余程才能のあるあの二人に任せた方が、将臣も上達が早いだろう。
今日は重盛も大人しく身体を休めているので、緊急の用でもない限りは邪魔をしないようにと景時は自室にて書状の整理をしていたのだが、それが終わってしまえば珍しくもやる事が途絶えた。
先日の源氏との戦が平家側の勝利に終わった事もあってか、源氏方も鳴りを潜めて次の手を窺っているようで、今の所は戦の気配もない。

「この状況がずっと続く、ということがないにしても...この時間は有難いな」

半蔀から見える空を見上げて、景時は思考だけを研ぎ澄ませる。
考えねばならぬことだけは限りがなかった。
将臣のこと、重盛のこと、戦のこと、平家のこと、今後のこと。
あの日戦場で感じた異様な力のこと。
「捕えよ」という言葉の意味。
何よりこれから先、将臣が前線に出て戦うというのならば、これまで以上に安全について考える必要がある。
今後、あの異様な力がまた戦場に現れるのであれば、景時の陰陽術が効かなくなる可能性とてあるのだ。

「とは言え、あの力の出所をどうやって探ればいいのか...」

判っているのは、その力が圧倒的であったこと。
少なくとも確実に景時よりも力を持つ存在なのは間違いない。そんな相手を、格下である景時に感知出来るかと言われると難しい。
それからもう一つは「捕えよ」という言葉だ。
何故、「殺せ」ではなく「捕えよ」だったのか。
嫌な話だが、殺すのと生かして捕えるのとでは楽さが違う。
殺すのは簡単だが、生かして捕えるのは難しい。特に相手の力量の方が高く、抵抗するなら尚更だ。
将級が相手になれば、景時とて策を弄さなければ勝てるかどうかは判らないが、刀が得意でないからと言って、一般兵にそう容易く遅れを取るつもりもない。何より景時にはいざとなれば陰陽術がある。
その相手を「殺す」のではなく「捕える」ことにどれだけの利があるのか。
この前のように多勢に無勢ともなれば、景時一人殺すくらい容易かっただろうに。

「捕える...。何か、聞き出したいことがあるのか? だが何を?」

重盛の懐刀、とまで噂されていることは知っている。
平家の情報を多く握っていると思われてもおかしくはない。
だが、重盛の懐刀だからこそ、そう容易く情報を漏らすわけがないとも推測出来そうなものだ。生かしておく面倒を考えれば、殺してしまった方が手っ取り早いように思うのは、景時だけだろうか。
手間をかけて捕まえるほどの価値が自分にあるとは到底思えない。
そう思っているのが自分だけである可能性は微塵も考えないで、景時は判らないとばかりに眉根を寄せた。

「...判らない事を考えていてもしょうがないな。機会があった時に、源氏方の誰かを捕えて直接聞き出すのが一番か。とは言え命令の理由まで知っている人間となると限られてくるか...? 誰が出した命令かにもよるが...。それに、あの力も...源氏と関わるものなのか、単なる偶然だったのか。一度だけじゃなんとも言えない」

判らない事を考えるよりは、出来る事をやった方が意味もあるだろう。
景時は頬杖を外すと身体を起こし、二階厨子に置いた書簡の中から目当てのものを取り出した。
再び文机に向かって座ると、取り出した書簡を上に広げる。

「時間がなくて随分放り出したままだったけど、本格的に、考えなきゃいけないかな」

景時の視線の先、見下ろす書簡に広がるのは、幾つもの図面と、そこここに書きこまれた漢数字や文字だ。
恐らくそれを景時以外の誰が見ても、理解出来ない代物だろう。

「図面は殆ど完成しているし...」

必要になるだろう材料は、既に取り寄せてある。後は、実際に組み立ててみるだけだ。組み立てる過程で、修正が必要になる部分も出てくるだろう。

今出来る事。
それは前線に立つ将臣の身を、確実に守る事。
そのためには、もっと力がいる。

「その場で使える陰陽術に限りがあるのならば、最初から呪具をそろえておけばいいんだ」

だが、呪具では使い道が限定されるため、戦況に応じて使用するのが難しいこともある。それをどうにかしてくれるのが、これから景時が作ろうとしている道具だった。

「これが完成したら、戦術の幅は広がる筈...。それに、気を込めた弾を多く作っておけば、いざって時に霊力が足りなくて術が使えないってことにもならずにすむ」

戦中に術だけに集中して気を編むのは難しいが、こういう何もない時にそうやって弾を作っておけるのならば、随分便利になるはずだ。使うときには発動の為の文言だけで済むのだから。

「........」

出来る事ならば人殺しの為の道具など、作りたくなかった。
だからこそ案を出しておきながら、それは実践されることなく今までこうして棚に収めたままにされてきたのだ。
その禁を自らの手で解こうとしていることに、全く抵抗がないと言えば嘘になる。
これまでにも人を殺めておきながら何を今更、と言われてしまえばそうだ。
それでも、これを作ることで「陰陽師は源平の争いに関与しない」という安倍の掟を明確に破ることになる。
今まで景時が戦に絡む事で、敵を傷つけるために陰陽術を使ったことはなかった。
将臣に仕掛けたように、身を守る為、あるいは撤退しやすくする為に術を行使することはあっても、敵そのものに対して術を使うことはしなかったのだ。
陰陽師の修行を、家督を継ぐために中断して武士に戻った身と言えど、お世話になった師匠の教えを破りたくはなかったし、その景時の意を汲んでくれた重盛も、陰陽術を敵を殺すために使えとは一度も命じなかった。
景時はあくまで──詭弁と言われようとも──武士として源氏と戦ってきたのだ。
それを今、覆そうとしている。自らの手で。
それでも。

「...あの子を守って、いつかは無事にあるべき場所へ返す為なら...」

なんと糾弾されようと、罵られようと、構わない。
必要ならば、やるだけだ。
それくらいしか、景時が将臣にしてやれることはない。
これ以上ない重荷を背負わせて、その手まで穢させて。それでも景時の身まで案じてくれる、心優しい少年を守る為に。

こうして空いた時間にこつこつと続けていけば、そう遠くないうちに完成させて、使う事も出来るようになるだろう。
景時は心を決めたように頷いて、現時点で不備がないか確かめるように、もう一度真剣な目を図面に落としたのだった。


>>


平家景時において、景時が例の銃を作るきっかけとなるのがこれかなあということで。
今後、いつ銃が完成するのか、平家側で銃を使うことがあるのかどうかは...うひひ^^←

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なんとか人間。
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遙か3の景時と4の風早中心に、腐女子的に萌え萌え言ってる人のブログです。
腐女子以外にはあまり優しくない内容が多くなると思われますので苦手な方はご注意ください。

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なお、プロフ画像はシノさんから頂いた頼朝様と景時。可愛くてハァハァするんだぜ!^q^
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