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同人サークル「天泣道化」なんてやってるかもしれない冴夜木ヤトによる、気の向くまま萌えの向くままの、とっても腐女子向けなブログ。 参加イベント情報とか発行物情報とかが載るかもしれない。
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Posted : 2025/04/21 08:42
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Posted : 2011/02/28 12:26
ちょっと間があきました。
あれから曇りばかりで今日は朝から雨。
なかなか本格的に暖かくなってくれないー。冬場の電気代に生温かい笑みしか浮かびません^q^

さて、これで深海~はラストになるはず!
と思って頑張って続きを書いてみる作業。
よろしければもう少しだけお付き合いくださいね。


※例によって例の如く、平家景時は捏造かつBLなのでご注意を!

ちなみに前回はこちらから~。


**********



柔らかい日差しが障子から差し込むのに促されて、景時はぼんやりと意識を覚醒させた。
何かを探すように手が伸び、視線がさ迷う。
明るくなってきた部屋の中に望むものがないのを確認して、手が動きを止める。
目尻から勝手に零れ落ちようとする涙を誤魔化すように、光を厭うように、景時は布団の中に深く潜り込んだ。

夢だと、判っていたはずだった。
それでも心は現実に彼の人の影を探す。
その浅ましさに反吐が出る。

最初に重盛の夢を見たのはもう五日程前のことになる。
あれから二度ほど、景時は夢で重盛に会う事が叶った。
夢の中だからだろうか。自分の心が作り出した都合の良い幻だからだろうか。
現実でもどうにか薬湯を飲めるようになった景時の事を知っているかのように、重盛は優しく頭を撫でて誉めてくれた。
三度目の夢を見たのは昨日。
その時には薬湯だけでなく、粥を口移しに食べさせられた。

『ぬしがこれを食わぬと私は生きた心地がせぬ』

もう居ないはずなのにそんな風に言う重盛が、やはり本当はどこかで生きているのではないかとありえない希望を抱く。
抱いた端から、そんな筈はない。その死を呼び込んだのも、見届けたのも、それ以上の許されぬ行いをした事もお前なのだと糾弾する声が内から響く。
ただ、そのどちらであっても、たとえこれが夢の中であっても、これ以上重盛に迷惑も心配も掛けたくはなかった。
その一心で、口の中に流し込まれた粥を飲み込む。
その後条件反射のように訪れる吐き気を、重盛の胸元に縋って必死で押さえ込んだ。
これ以上この胸を、この人を、穢してはいけない。
それだけを拠り所に景時はどうにか嘔吐の衝動を乗り切った。
弱った身体はそれだけで悲鳴を上げて、体力を使い果たしたように動かせなくなってしまったが。

重盛様。

もう大丈夫だ、と弱々しい笑みを浮かべた景時を強く抱きしめて、重盛はただよくやったと言うように優しくその背を撫で続けてくれた。
次第に遠ざかっていく意識の隅で、ふわりと重盛の傍に置かれた粥が香る。
それは、いつか食べた譲の作ってくれた粥の匂いと同じ気がした。

『景時、生きよ。生きて我々が望んだその先を見届けてくれ』

今までにない言葉に、景時は夢の終わりを悟った。
嫌だ、と力の入らない手が重盛の衣を掴む。
その手に優しく触れて、けれど重盛は続けた。

『ぬしが語る私の知らぬ未来を楽しみに、いつまでも待っておる。だから』

生きよ。
決して死を望むな。
最後の瞬間まで生き続けよ。

優しくも残酷な言葉に涙が止まらず零れ続ける。
途切れそうな意識を繋ぎ止める様に、重盛の名を呼んだ景時の唇に、触れるだけの口付けを与えて。

『景時、ぬしは独りではない。私もずっと、ぬしの傍に居る。たとえ見えずとも──』

しっかりと指先まで絡んだ手の感触と、その囁きが夢の終わりだった。
景時は布団の中で固く目を閉じて、その全てを思い返す。
罪悪感を少しでも軽くしたい、愚かな思いが生み出した夢だったとしても。
赦されたい心が見せた幻だったとしても。
もう会えないと思っていた何より大切な人からの言葉は景時に影響を与えずにはいられない。
ここで景時が死んでしまえば、重盛を二度悲しませる事になる。
生き続けることが与えられた罰なのだとしたら、それを受け入れるのが景時に出来る事だ。
そして、いつかその日が来たら。

「...重盛様...」

笑って、迎えてくれるだろうか。
いや、怒られても恨まれていてもいい。
また会えるのなら、それだけでいい。
その為に、今は生きよう。
生き続ける努力を、しよう。
愚かな自分の為に泣くのは、これで最後にしよう。

布団の中に丸まって、景時は声を堪えて嗚咽を零した。

『それ以上水分を出してどうする。干からびてしまうぞ』

重盛の苦笑が聞こえた気がして、涙は余計に止まらなくなった。

今だけだから。
これを最後に、ちゃんと前を向くから。
自分の過ちから、目を逸らさないから。
今だけは、見逃してください。

涙が出つくすまで泣いて、泣いて、泣ききって。
やがて景時は腫れた目元を袖で拭って布団から顔を出した。
そろそろいつものように将臣か弁慶がやってくるだろう。

「それまでに、目元...治るわけ、ないか...」

自分で触れるまでもなく、熱を持って腫れているのが判る。
みっともない姿を見られるのは今更だから、どちらが来ても驚きはしないだろう。
そう自分を納得させて、景時は枕元に置かれた水差しの中身を一口含む。
吐き気は完全に消えてはいないものの、戻すほどではない。

「...だいじょうぶ。オレは...大丈夫だから」

どうか、天にいる貴方がこれ以上オレなんかの事で思い煩いませんように。
聞こえてきた足音に、景時は小さな笑みを浮かべて顔を上げたのだった。



>>

という訳で、長くなりましたが深海~はこれで終了です。
ここまでお付き合い頂きどうも有り難う御座いました!!!
とは言え、平家景時シリーズ自体は今後ものんびり進行で続けていくつもりですので、よろしければまた足を運んでやってください^^

もしかしたら、そのうち深海~のオマケみたいな短いのをちらっと載せる、かもしれません。

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ヤト
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非公開
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なんとか人間。
自己紹介:
遙か3の景時と4の風早中心に、腐女子的に萌え萌え言ってる人のブログです。
腐女子以外にはあまり優しくない内容が多くなると思われますので苦手な方はご注意ください。

遙か中心ネオロマ特化SNS「遙紅花街」にも生息中。御存知の方はお気軽にお声掛けてくださいませ^^

なお、プロフ画像はシノさんから頂いた頼朝様と景時。可愛くてハァハァするんだぜ!^q^
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